『SAKAMOTO DAYS(サカモトデイズ)』の中でも、ひときわ謎とユーモアに満ちた存在──それが南雲です。
登場するたび空気を変え、誰よりも軽やかに、そして時に残酷に「殺し屋」としての実力を見せつける。
でも、その軽さの裏には、消し去ることのできない“過去”や“信念”があるようにも感じられます。
今回は、そんな南雲の登場回をアニメ・原作の両方から丁寧に整理し、彼という人物の“断片”を拾い集めてみました。
主な登場巻:11巻~18巻(13巻は南雲中心の過去編)
所属組織:ORDER(オーダー)
得意武器:変装・奇襲・斬撃
注目エピソード:南雲VS楽の戦い(17巻)/“徳を積む男”(13巻)
南雲の初登場は何巻?【原作・アニメ対応表】
南雲が物語に初めて登場するのは、原作『SAKAMOTO DAYS』第96話「ヘルシー」(11巻収録)。そしてアニメ版では、第3話「シュガーパークへようこそ!」で坂本との再会を果たします。
“懸賞金10億円”の告知とともに現れた殺し屋
この登場は、ただの顔見せではありません。坂本太郎に10億円の懸賞金がかけられたことを告げるという、“物語の緊張度を一気に跳ね上げる”場面です。
でも、注目すべきはその伝え方。
南雲は何の脈絡もなく、まるで「今日の天気、晴れだったよ」とでも言うような調子で、人の命を狙う報せを口にします。
この“温度差”こそが、南雲というキャラクターの核にあるもの。
殺気を包み隠さず放つのではなく、「笑顔で差し出すナイフ」のような危うさが、初登場時から強烈に印象づけられています。
軽快な言葉の奥にある“殺気”
坂本との再会にも関わらず、南雲は「懐かしさ」や「感情的な再会」を一切見せません。
むしろ、淡々と、どこか演技のような調子で会話を進めていきます。
この時の坂本はすでに“引退した男”。その空気を読んだうえで、南雲は言葉のナイフを丁寧に研ぎながら会話を仕掛けているようにも見えます。
▶ 行動の裏にある気持ち
「気持ちはある。でも、うまく言葉にできなかっただけかもしれない。」
坂本に会えて、何か言いたいことがあった。でも、殺し屋としての自分が先に動いてしまった。
南雲の沈黙や間の取り方には、そんな「過去を切り離したままの男」の哀しさが滲んでいます。
▶ 素直になれなかった理由
「期待した分だけ、傷つくのがわかってたんだと思う。」
だからこそ、再会の第一声は“10億円の懸賞金”という仕事の話。
そこにこそ、南雲の「感情を仕事で覆い隠す」不器用さがにじみ出ていたように思います。
漫画『サカモトデイズ』南雲の登場回まとめ【巻別】
南雲は11巻から18巻にかけて複数回登場し、特に13巻・17巻で大きな役割を果たします。以下に代表的な巻と注目回を抜粋してご紹介します。
13巻:任務と“矛盾”が交差する──過去編「徳を積む男」
このエピソードでは、若き日の南雲が坂本・四ツ村・神々廻らと共に任務にあたる姿が描かれます。
南雲は変装や不意打ちを駆使しながらも、殺し屋でありながら、どこか人間らしい“ためらい”を見せるのです。
その姿は、「仕事」としての殺しと、「心」としての葛藤のはざまで揺れているように見えます。
特に、命令に従いながらも、“生かす”という選択肢をチラつかせる場面では、彼の内部で交差する矛盾が明らかになります。
▶ 行動の裏にある気持ち
「殺す」という行為を“仕事”として受け入れながら、無関心にはなりきれない。
それが彼の「徳を積む」という奇妙な口癖に表れているようにも感じられます。
皮肉や冗談のように聞こえるその言葉は、もしかすると「罪を和らげたい」「せめて心を保ちたい」という
小さな祈りのようなものだったのかもしれません。
▶ 心の矛盾を抱えているとき
「近づきたい。でも、これ以上踏み込んだら壊れてしまう──そんな感情の綱引き。」
南雲が“人を殺す役目”を演じながら、どこか他人事のように振る舞うのは、その綱引きにいつも負けないための自己防衛だったのかもしれません。
17巻:南雲VS楽──“最強”の刃が交錯する瞬間
ORDERの南雲とスラーの側近・楽との一騎打ちは、南雲の能力の真骨頂ともいえる戦い。
変装による陽動、斬撃の精密さ、そして判断の速さ。すべてが「最強の殺し屋」としての実力を物語っています。
しかし、それ以上に印象的なのは──彼が“楽しそうに”戦っているように見えること。
そこには、殺し屋として生きることの悲しみと、それに慣れてしまった自分への皮肉が重なって見えるのです。
▶ 素直になれなかった理由
南雲が「戦いの中で笑う」のは、おそらく“本気になると壊れてしまう”という自覚ゆえ。
軽口の裏には、相手に対しても自分に対しても、本音を隠す優しさと恐れが混じっているのかもしれません。
▶ 読者への共感リンク
こういう気持ち、少しわかる気がしませんか?
「本当は怖い。でも、笑ってしまう。」「誰かに見透かされたくなくて、冗談にしてしまう。」
南雲というキャラは、強さや技術だけでなく、そんな“心のくせ”までリアルに描かれているからこそ、読者の心に残るのだと思います。
アニメ版での南雲|声優・演出にも注目
2024年に放送されたアニメ『SAKAMOTO DAYS』第1期では、南雲は第3話「シュガーパークへようこそ!」にて初登場。
その出番は短めながらも、視聴者の印象に強く残る存在感を放っていました。
変装と沈黙が生む“違和感”の演出
南雲のキャラクター性は、「軽妙さ」と「不穏さ」が同時に存在する点にあります。
アニメでは、この微妙なニュアンスが演出と声のトーンによって丁寧に表現されていました。
たとえば、最初に坂本に接触する場面では、柔らかく冗談めいた言い回しをしながらも、
その声にはどこか無感情な冷たさが混じっています。
この“声と表情のギャップ”によって、視聴者は「この人、本当に味方なのか?」という不安を無意識に抱くのです。
▶ 沈黙の意味、それは“隠したい気持ち”の証
南雲はよく喋りますが、大事なところではふいに沈黙する。
その間は、単なる演出の間ではなく、「言葉にできない感情が滲んでいる空白」なのかもしれません。
変装とは、姿を変えることではなく、本心を隠すための術。
沈黙とは、気持ちを抑えきれないときに選ばれる、最も静かな感情表現。
そう考えると、南雲の“変装と沈黙”は、ただの戦術ではなく、心を守るための癖のようにも見えてきます。
声優・千葉翔也さんによる“揺れる声色”
南雲を演じるのは声優・千葉翔也さん。
柔らかい声質をベースに、感情の深度をセリフの間や呼吸で表現する演技が特徴です。
坂本との再会シーンでの「どこか他人事のようなトーン」は、
“知っているけれど、もう戻れない”という距離感が、わずかな声の震えに込められていたようにも感じられました。
▶ 読者への共感リンク:「この人、なんだか怖い」
南雲を見て「面白い」より先に「怖い」と感じた人、きっといますよね。
それは彼が“声”と“間”で、私たちの心に入り込むような演出がされていたから。
その“違和感”こそ、南雲というキャラクターが物語に与える最大の武器なのだと思います。
まとめ:軽さと残酷の間にいる“矛盾する存在”
南雲というキャラクターは、ただの“変人”や“トリックスター”ではありません。
彼の言動には、常に「合理性と感情の綱引き」が存在しています。
たとえば、明るい笑顔のまま敵を斬る場面。
それは「殺し屋として当然の行動」かもしれませんが、その手が一瞬止まりそうになる描写もある。
そのたびに思うのです──「この人、本当は何を守りたいのだろう」と。
▶ 心の矛盾を抱えているとき
「近づきたい。でも、これ以上踏み込んだら壊れてしまう──そんな感情の綱引き。」
南雲の姿には、そんな不器用さと優しさが、ひそかに滲んでいます。
そして、その“揺れ”こそが、物語に深みを与える。
だから僕たちは、南雲の登場を待ち続け、彼の一言に耳を澄ましてしまうのでしょう。
▶ もう一度、あの瞬間を味わいたくなったら
南雲の魅力を存分に味わえるのは、13巻(徳を積む男)と17巻(VS楽)。
この2冊には、彼という人物の“軽さと重さ”のすべてが詰まっています。
「あの言葉の意味、やっとわかったかもしれない」──
そんな再読の感覚を、ぜひあなたにも体験してほしいと思います。
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