種﨑敦美が演じる玉葉妃の“柔らかな芯”とは｜薬屋のひとりごと声優考察

それ、気になってたんですよね。
「薬屋のひとりごと」の玉葉妃──上級妃という高い地位にありながら、どこか親しみやすく、猫猫（マオマオ）とも気さくに接するあの人。

その声に耳を傾けていると、“気品”の中に“柔らかな芯”が感じられる瞬間があります。
それは、単なる演技ではなく──感情の設計図に、確かな“声の物語”があるからだと思うんです。

玉葉妃とは？｜薬屋のひとりごとにおける“気品”と“軽やかさ”の象徴

『薬屋のひとりごと』に登場する玉葉妃（ぎょくようひ）は、後宮の中でも高位にあたる「上級妃」として、皇帝から深く寵愛されている存在です。
けれど、ただ高貴で美しいだけではありません。彼女の魅力は、その品格に、少しだけ“人間くささ”がにじむところにあるのです。

たとえば、猫猫に見せるあの柔らかい笑み。気まぐれなようで、実は人の芯を見抜いているような鋭さ。
物腰は穏やかでも、言葉の端々からは知性と好奇心が垣間見えます。そう、玉葉妃は──「ただの妃」ではなく、「自分の意思でそこに立つ人」として描かれているのです。

その声に滲む“距離の取り方”

声を聴いていると、玉葉妃が常に人との間に“程よい距離”を置いていることに気づきます。
それは高慢さではなく、自分の立場をきちんと理解しているからこそのふるまい。

猫猫と話すときにだけ、その声が少しだけ近づく──そんな繊細な変化に、演じる声優の技が光っています。

後宮の中で、自分を見失わないという強さ

後宮という舞台は、競争と嫉妬、そして孤独に満ちた世界です。
そんな中で、玉葉妃は誰かと張り合うのではなく、自然体でふるまう姿勢を貫いています。

声には、浮き沈みに流されない“静かな強さ”が宿っていて──その在り方に、思わず憧れを抱いてしまうのです。

種﨑敦美が玉葉妃に吹き込んだ“柔らかな芯”

種﨑敦美さんといえば、『SPY×FAMILY』のアーニャ・フォージャーや『葬送のフリーレン』のフリーレンなど、幅広い役柄を繊細に演じ分ける実力派声優です。

その彼女が「玉葉妃」に与えたのは、凛とした“芯”を感じさせながらも、どこか包み込むような“柔らかさ”でした。

気品だけじゃない、母性的なあたたかさ

玉葉妃の声を聴いていると、上品で落ち着いたトーンの奥に、“誰かを受け止める”ようなやさしさが響いてきます。

それは、猫猫に対して向けられる信頼のまなざしであり、母性的な包容力。
高い地位にある妃でありながら、玉葉は「一人の女性としてどう在るか」を声で体現しているのです。

感情の“引き算”が際立たせる余韻

玉葉妃のセリフは、決して多くを語るタイプではありません。
でも、だからこそ、一言ひとことに重みが宿ります。種﨑さんの演技は、必要以上に感情を乗せず、“余白”を残すようなスタイル。

その引き算の演技が、聴き手に解釈の余地を与え、キャラクターの奥行きを深めているのです。

原作との違いと、ドラマCD版の声優比較

『薬屋のひとりごと』の原作は、小説投稿サイト発の作品として人気を博し、現在は小学館・ヒーロー文庫から書籍化されています。

その原作小説をもとにしたドラマCD版では、玉葉妃を日笠陽子さんが演じていました。
一方、TVアニメ版では種﨑敦美さんが担当。演じ手が変わることで、玉葉妃の印象にはどんな違いが生まれたのでしょうか。

演じ方のニュアンスの違い

日笠陽子さんの玉葉妃は、凛とした強さが際立つタイプ。
その声からは「妃としての威厳」や「後宮を生き抜く覚悟」が伝わってきます。

一方で、種﨑敦美さんの玉葉妃は、やわらかな口調のなかに“知性と感受性”を感じさせる表現。
同じキャラクターでも、声によってまったく異なる輪郭が浮かび上がるのです。

声優によって変わる“玉葉妃の見え方”

これは玉葉妃に限らずですが、「声」というのはキャラクターの人格を構成する大きな要素です。
日笠さんの演技が“皇帝の妃”としての威風を引き立てるなら、種﨑さんの演技は“人としての温かみ”を前面に出しています。

どちらが正解というわけではなく──聴く者がその声を通じて、玉葉妃のどんな一面に惹かれるか。それこそが、演技の持つ魔法なのだと思います。

玉葉妃の“人間らしさ”に共鳴する理由

後宮という舞台に立つ玉葉妃は、誰もが一目置く上級妃。
けれど、僕たちが彼女に惹かれるのは、完璧な姿に憧れるからというより──
その高貴な立場の裏に隠された、“ひとりの人間としての揺らぎ”を感じ取るからなのかもしれません。

“優雅さ”の中にある不器用さ

誰よりも洗練された身のこなし。けれど、猫猫とのやりとりには、思わず頬がゆるむような“素の一面”がのぞきます。

完璧を装いつつ、ほんの少し不器用で、感情をしまいこむこともある──そんな玉葉妃の姿は、私たちの日常にも重なって見えるのです。

こういう気持ち、少しわかる気がしませんか？

大切な人にだけ見せる“弱さ”や“素直さ”。
それを言葉にするのが怖くて、つい笑ってごまかしてしまう──そんな経験、きっと誰にでもあると思います。

玉葉妃の声には、そうした沈黙の中にある感情が、やさしく包まれている気がするのです。

まとめ｜“声”は、感情のもう一つのかたち

キャラクターの魅力は、セリフや行動だけでは語りきれません。
そこに“声”が重なることで、その人物は初めて“生きている”と感じられる──
玉葉妃を演じる種﨑敦美さんの声は、まさにその証明のような存在でした。

高貴さと親しみ、強さとやわらかさ。
そのどちらもを同時に抱える玉葉妃というキャラクターを、丁寧に、繊細に、感情のグラデーションで描き出していた。
だからこそ、僕たちは彼女の言葉に耳を澄まし、その沈黙にすら意味を探してしまうのだと思います。

“声”は、感情のもう一つのかたち。
そしてそれは、ときに文字よりも深く、心の奥に残り続けるものなのかもしれません。